1冊の本との出会い

私が休職を始めて3ヶ月程度過ぎた頃でしょうか。未だに自分のうつ病を認めることができず、日々様々なことを考えているときに、 ふと以前読んだことのある本を思い出しました。

「永遠の仔」という小説です。

これは簡単に言ってしまえば、幼い子供たちの精神疾患の物語です。3人が主人公です。 女の子2人と男の子2人。この3人は幼少期にそれぞれ違う形で心に傷を負い、 治癒を目指して四国にある大きな精神疾患専門の病院に入院しているんです。

女の子は父親からの性的虐待、1人の男の子は父親からの暴力、もう1人の男の子は母親からの虐待でした。 そういった精神疾患を抱えた子供たちが集団生活を行っているんです。子供1人1人が諸刃の剣のような精神状態で、 それぞれ違うタイプの傷を負っているため、お互いにあまり干渉することはなく個々人を尊重しあう、みたいな暗黙の了解があるようでした。


子供たちは小学生です。義務教育なので、その病棟内できちんと授業があり、 集団生活を通して社会で生きていけるような精神状態を育成していきます。ストーリーは、幼少期の3人の様子と、 現代の3人の話がシンクロしながら進みます。

定期的に主治医との面談があるのですが、そこで精神状態がチェックされます。 その時に主治医からOKが出れば週末に家に帰ることもできます。しかし主人公の3人は家庭内での問題があったため、あまり家には帰っていませんでした。

そして幼少期の病院の治療方法の1つに「山登り療法」というのがあったんです。 登山は足腰などの体力的な鍛錬にもなりますし、頂上を目指すというみんなの共通目標に向かって歩を進めるため、精神鍛錬にもなります。 舞台となった四国にはいくつか山があるようで、体育の授業のような感じで登山をしていました。そして卒業時にこれまでの総まとめ的な登山があって、 それが四国でも霊峰として知られている「石鎚山」の登山です。主人公の3人は、 この石鎚山に「救い」があると信じていました。精神疾患を背負い、世間からつまはじきにされていると思い込んでいる3人が、 必死に「救い」を求めて険しい登山道を登っていく。途中、鎖場もあって、太い鎖にしがみつくようにして登っていく姿が描かれています。

この本を読んで、私も「山の向こうには何かしらの救いというかパワーの源になるようなものがあるのだろうか」と考え込むようになりました。 そして登山への思いが強まったとき、休職してずっと見続けてきた高尾山に目をやりました。

「まずはあそこから登ってやろう」と思ったんです。

これが2007年のほとんどを費やした壮絶な登山の始まりでした。

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