うつ病で激しさを増す登山

この頃はザックの中身もかなりグッズが増えていました。真夏に差し掛かる頃だったため、2リットルのペットボトルを2本、 マナスルコンロ、雨具、ロープ、各種救急グッズ、タオル、軍手、コンパス、地形図、 マウンテンバイクの予備のチューブ、などなど。あと腰にはNIKONのF5。かなりの重量になります。 これらを背負って、まだ暗いうちから家を出て、事故が怖かったのでドンキホーテで買ったバイク用のヘルメット、 マウンテンバイクにはライトがなかったので、ヘッドランプというスタイル。誰かが見たらかなり怪しい格好です。 ザックとカメラで総重量はおそらく20kg近くなっていたと思います。

陣馬山方面の山々を制覇したあと私が目指したのは裏丹沢でした。 私の家からだと甲州街道を山梨方面に進み、最初の難所が大垂水峠です。 坂道的には和田峠ほどではないので、私からしたら難所と言うほどのところではなかったのですが、 なにしろ背負っている荷物が重くなっていたので、最初は苦労しました。相模湖を過ぎたあたりで左に曲がり裏丹沢を目指します。 最初のうちは登山道まで行きに1時間程度だったのですが、遠くなっていくに従いマウンテンバイクの時間だけで4時間もかかっていました。 裏丹沢の山々はすべてが1000メートル級です。最初はやはりかなりつらく、何度も休憩を取りました。 しかし、通いつめている間に周囲の景色を見る余裕ができたり、写真を取る余裕も出てきました。


最終的にはザックに2リットルのペットボトルを4本、マナスルコンロ、あと各種登山グッズ、 腰のカメラ、という重装備で登っていました。さすがに毎日ではきついので隔日にしました。 体を鍛えるため、登山に行かない日はザックに2リットルのペットボトルを6本、1.5リットルのタンク、カメラ、 で近所の散歩などに行ってました。家の中では息子を肩車してスクワット。もうキチガイです。 当然体重も減りました。減ったと言うか絞られたというか。

何をどう思ったのか、例の重装備で山中湖までサイクリングした日もありました。 総走行距離約160km。山中湖付近の山伏峠の登りがかなりきつかったのを覚えています。 山中湖で例の通りマナスルコンロで一服。帰りの山伏峠はそれほどきつくなく、帰りはほとんど下りでかなり快適でした。

で、最も怖かった体験があるんです。陣馬山から連なる醍醐丸という山に登ろうと思ったときです。 地形図を見ながら、「こっちの方が近いかな?」と入っていった道が大間違いだったんです。次第にきつくなる勾配。 そして土だった道がほとんど石と岩になっていきました。最終的には両手で石をつかみながら体を持ち上げていくというスタイルになっていました。 これってロッククライミングですよね。そしてふと後ろを振り返ったときに、サーッと血の気が引きました。 断崖絶壁です。カーン、カーン、と小石が下に落ちていきました。 さすがにこのときは命の危険を感じました。しかし後にも引けません。 タダひたすら上に上りました。何とか崖をクリアして杉林に入っていきましたが、勾配は変わらず、 杉の木の幹をつかんで体を持ち上げ、杉の木に寄りかかって休憩、というスタイルで上を目指しました。 完全に迷子です。どこかのホームページで、「山で迷ったら上を目指す」というのを覚えていて、 ただその一言を信じて上を目指しました。もう、ほとんど体力を使い果たし、気力のみです。 ようやく登山道らしきところに出ても自分の位置が分からず、どっちに行っていいのかも分かりません。 また上を目指しました。そしてようやく頂上にたどり着きました。もう疲れ果てて、小1時間ほど寝転がって休憩しました。 自分の位置の確認と登山道を確認して下山。後は和田峠からの下りだったので楽でした。

こういった壮絶な登山を2007年11月くらいまで続けました。最後に裏丹沢で最高峰の大室山に登りたかったのですが、 マウンテンバイクの行きで約3時間、登りに4~5時間、下りに3時間、マウンテンバイクの帰りで3時間、 合計14時間、限界でした。日も短くなっており、おそらく明るいうちに下山できない。危険を感じて大室山は断念しました。

という私の壮絶な登山です。医者いわく、一般的なうつ病患者はそういったことはしないそうです。 通常は気分が落ち込み家の中で暗くなっていることが多いそうなのですが、私の場合は軽い「そう」、 うつとは逆の「そう」が出ることがある、とのことでした。それが出てくると今回の登山のように1点集中でのめりこんでしまうとのこと。 「山に登りたい」が「山に登らなければならない」に変わっていました。双極性障害ほどではないとのことですが、 それにちかいうつ病なので、軽いそうが出たときには注意してくださいと言われました。行動力が出てしまい、 自殺へ向いてしまうと簡単に命を投げ出す人もいるのだそうです。

そう言われると、確かに山の中で1人、ロープを握り締めて涙を流していたこともありました。 枝にロープをくくりつけ、両手でしっかりと引っ張り折れないことを確認したり。 しかし結局死に切れなかった自分の心の弱さ。これは何にも変えがたくイライラしました。自分はこんなにも情けなかったのかと。

さらに、私の登山は徐々にザックの重さが増していき、最終的には30kg近い重さになっていたのですが、 これは自傷行為と同じでした。自分の体を痛めつけることで自分の中に巣食う悪を出そうとしていたのかもしれません。 そして思いザックを背負ってやっと山頂を極めることで悪が抜けていくと思っていたのです。

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